スポーツの最中や終わった後に、「すねの内側(ふくらはぎ)の筋肉に痛みや腫れ」が出ることはありませんか?
運動の度に痛みを感じるなら、「シンスプリント」というスポーツによる過労性障害かもしれません。
「シンスプリント」とは、陸上選手や走ることの多いサッカーやバスケットボールの選手に多く、特にシーズン初めや新人に起こりやすい疾患で、『初心者病(素人病)』と呼ばれることもあります。
痛みや腫れを放置したままスポーツを続けると、重症化して「疲労骨折」となり、しばらく運動禁止となる可能性もあるので、速やかに受診して、適切な治療を受けましょう。
シンスプリントは、「脛骨過労性骨膜炎(けいこつかろうせいこつまくえん)」とも呼ばれ、すねの骨(脛骨)の内側にくっ付いている骨膜(≒筋肉)が炎症している状態です。
初期の段階では、運動後に“ジーンとする鈍痛”を感じるだけですが、症状が進行すると運動中も痛みを感じるようになります。
さらに進行すると、安静にしているときにも痛むようになり、次第に歩行困難となります。
スポーツだけでなく日常生活に支障を来さないようにするためにも、症状が軽いうちに適切な処置を受けることが大切です。
走るスポーツをしている中高生(特に新人選手)や運動を再開した成人
いずれの場合もシンスプリントは“長く走るスポーツ”をする人に起こりやすく、陸上競技以外にもサッカーやバスケットボール、女子の場合にはチアリーディングやエアロビクスで多くなっています。
また、シンスプリントは偏平足(土踏まずがない)や回内足(かかとが内側に傾いている)など足のアライメント異常がある場合にも発症しやすい傾向があります。
シンスプリントの直接原因は、すねの骨に繋がっている骨膜(ひらめ筋などの付着部)への過剰な負担、つまりオーバーユース(使い過ぎ)です。
さらに次のような要因が重なると、脛骨骨膜に過剰な負担がかかり炎症を起こすため、腫れや痛みが生じます。
ランニングの量や質など運動内容が急激に変化することで、すねの骨に付着している前脛骨筋やひらめ筋など、ふくらはぎ周りの筋肉を使い過ぎてしまうことがあります。
特に新人選手(初心者)や久しぶりに運動を再開した人の場合、くるぶしなど足関節の柔軟性が低いことや下腿(膝からくるぶしまで)の筋力不足もあり、トレーニングの疲労が蓄積した頃にシンスプリントを発症しやすくなります。
また、競技者でも同様にシーズン初期や走り込みの時期などに発症リスクが高くなります。
偏平足・回内足(シューズの内側がすり減る)などの足のアライメント(形)に異常がある人は、すね周りの筋肉に過剰な負担がかかるので、炎症を起こしやすく、シンスプリントの発症リスクが高くなります。
他にも、次のような運動環境がシンスプリントを引き起こす誘因になります。
シンスプリントとは腱膜の炎症なので、初期の段階ではレントゲンでは異常が写りません。
レントゲンに写るということは、すでに悪化して、骨にも異常を来している証拠です。
また、シンスプリントと似ている疾患に「疲労骨折」があります。
長期間、すねの内側の筋肉だけに痛みがある場合には「疲労骨折」との鑑別が必要です。
疲労骨折も初期の段階では、レントゲンに写らないので、シンスプリントと区別するためには、MRI検査(T2脂肪抑制撮影)が有効です。
※あくまでも区別の目安なので、はっきりしない場合もあります。
シンスプリントはスポーツによる過労性障害(使いすぎによるもの)なので、基本的には「患部を休めること(保存治療)」が治療の中心となります。
まずは、患部の安静を図りましょう。
初期段階であれば2週間くらい安静によって、症状が改善します。
シンスプリント発症ケースのほとんどは「保存治療」で改善します。
その改善までの期間を短縮するために、電気治療を行います。
ES-4000という機械を使って、ハイボルテージ治療による炎症の軽減を行った後、マイクロカレントという微弱な電気を流して、組織の修復を早めます。
マイクロカレントはプロスポーツ選手も使用する細胞の修復を早める電気になります。
運動時だけ痛みがある間は、できるだけふくらはぎ周辺(患部)に負担をかけないよう安静にし、運動量を減らすような調整を行う必要があります。
特に、歩くだけでも痛みがある場合は、しばらく運動を休んだ方が良いでしょう。
焦って中途半端な状態で復帰しても、再発するリスクが高まるだけです。
自発痛(何もしなくても痛みがある状態)がなくなったら、ウォーキングなど軽い運動から始め、両足ジャンプでも痛みが出なくなったらランニングなど、段階を踏んで復帰することが大切です。
スポーツ復帰の目安は、初期であれば2週間程度、重症であれば2~3か月後くらいです。
スポーツ障害である「シンスプリント」の予防にかかせないのが、“ストレッチやアイシング”です。
日頃からの足の筋力や柔軟性のトレーニングをしておくことが、発症防止に繋がります。
また、水泳や自転車なども足の衝撃と体重負荷が一度にかからず、筋肉強化ができるので、シンスプリント予防に効果的です。